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私たちは裁判をすることにしました

更新日:2021年9月2日

原告相原幸典ほか8名

原告ら訴訟代理人弁護士西野裕貴(https://fukuoka-roudou.com/lawyer/


私たちは梅光学院大学の教員です。

 私たちの大学には「研究室」がありません

私たちは、大学教員の研究の自由を守るために裁判をすることにしました。「研究室」は、大学教員、学生の学問の在り方にとどまらず、日本の学術の将来にかかわるものであると思っています。裁判を通して、あるべき「研究室」のかたちを多くの人に考えてもらいたいと思っています。


●私たちはどのような場所で研究しているのか

私たちの研究環境には次のような問題があります。


① 学生や職員が行き交っている

② 職員の事務手続きの声が常に聞こえる

③ 研究資料を置き続けられない

④ 書籍等の置き場が極めて少ない

⑤ 研究成果が盗用される可能性がある

⑥ 学生の成績をつけることが難しい

⑦ 学生対応するときにプライバシーを守りにくい


これから動画や写真で分かりやすく説明します



●大学が研究室と呼ぶ場所の図面

時間があられる方は、この建物の構造がわかる動画((21) 梅光学院大学/Baiko Gakuin University The Learning Station CROSSLIGHT Concept Movie – YouTubeより引用)

があります。2分56秒ですので、まず見ていただけるとイメージをお持ちただけると思います。お時間がない方は、30秒~35秒のところをご確認ください。動画をご覧いただけない方にもわかりやすく写真を示しながら説明します。

梅光学院大学北館を紹介する学校法人梅光学院のウェブページ(新校舎 The Learning Station CROSSLIGHT | 梅光学院大学受験生応援サイト (baiko.ac.jp))より引用


大学が研究室と呼ぶ場所は上記図のE、Fと記載された場所で、下の写真に写っている場所です。動画では30秒~35秒あたりに映っています。


① 学生や職員が行き交っている

テーブルに座っている学生のように、教員もこの席に座って研究をするのですが、写真に写っているように、その横を学生が行き交っています。学生だけでなく、職員、ひいては、学外の方もここを通ることはあり得る環境です。そのため、研究に集中できる環境ではありません。


② 職員の事務手続きの声が常に聞こえる

梅光学院のウェブページに「教職協働のフリーアドレスオフィス」と記載されていますが、教員と職員のいずれもが、この研究室と呼ばれる場所を利用します。

 そのため、職員の事務手続きの声が常に聞こえ、研究に専念できません。

梅光学院大学北館を紹介する学校法人梅光学院のウェブページ(新校舎 The Learning Station CROSSLIGHT | 梅光学院大学受験生応援サイト (baiko.ac.jp))より引用


③ 研究資料を置き続けられない

授業は90分です。それなのに荷物は60分までしか置くことができません。授業がある場合には荷物を一度片づけなければいけません。授業から帰ってきて研究を再開しようとしたときに席が他の人に取られていることもあります。


④ 書籍等の置き場が極めて少ない

写真には4つの書籍置き場が写っています。教員一人が利用できる書籍置き場は1つです。大学の研究者には少なすぎます。また、取られる可能性があるので鍵を掛けることができません。これでは研究がはかどりません。



⑤ 研究成果が盗用される可能性がある

このように学生等が行き交っていますので、研究内容をのぞき見られ、その結果、盗用される可能性があります。盗用されないように注意して研究しようとすると、研究資料を十分に検討できない状態となり、研究の効率も下がります。


⑥ 学生の成績をつけることが難しい

このように学生等が行き交っていますので、学生の成績をつけるなどプライバシー性の高い情報を取り扱うことが難しいです。


⑦ 学生対応するときにプライバシーを守りにくい

半個室の学生面談場所があるのですが、写真のとおり、どの学生とどの教員が面談をしているのかが、行き交う他者から見て取れます。このような状況では、学生も気軽に教員に相談できませんし、プライバシー性が高い話をすることができません。



●法律等では「研究室」はどうすることが求められるか?


学校教育法第3条により求められる大学設置基準の第36条第2項では「研究室は、専任の教員に対しては必ず備えるものとする。」と定められています。

この条文について、文部科学省は、研究室は「研究執務に専念できる環境でなければなりません。また,オフィスアワーに適切に対応できること等,学生の教育上の観点からも適切な設備であることが必要です。」と説明しています(設置認可申請又は届出について(施設・設備):文部科学省 (mext.go.jp))。


以下のとおり、裁判例でも、専任教員が研究室を利用できる権利があることを認めています*。

①学校法人V大学事件・東京地判平成24年5月31日労働判例1051号5頁

「大学設置基準36条2項は,『研究室は,専任の教員に対しては必ず備えるものとする。』と規定しており,大学教員の教育研究の拠点としての研究室を持つことは,専任の教員の権利であるということができる


②大阪地決平成29年3月31日判例集未搭載 LLI/DBL07250345

「大学准教授は,『専攻分野について,教育上,研究上または実務上の優れた知識,能力及び実績を有する者であって,学生を教授し,その研究を指導し,または研究に従事する』(学校教育法92条7項)こととされており,その主たる業務内容は研究教育活動である上,大学は,学校教育法3条に基づいて文部科学省が定めた「大学設置基準」により,その所属する専任教員に対して,研究室を備えることが求められていること(36条)にも鑑みれば,債務者は,債権者との間の労働契約上,研究教育活動を十分に行うことができるよう,研究室等の本件大学の施設を利用させる義務を負っているものと解するのが相当である。


③学校法人梅光学院ほか(特任准教授)事件・広島高判平成31年4月18日労働判例1204号5頁

研究室の利用も,教員の学問研究のために認められるべきものではある


*裁判例の大勢は、研究室の利用権を認めつつも、具体的にどの研究室を利用するかまでの権利を認めていません。分かりやすく言えば、研究室A、B、Cの3つがあった場合、A、B、Cのいずれかの研究室を利用する権利は認めるけれども、そのうちのAを利用させるようにと求めることはできないという意味です。


●「学問」に資する「研究室」を考えたい

裁判例でも、まだ「研究室」が備えるべき具体的内容についてしっかり検討されたものはないようです。研究室と呼ばれる一定のスペースがあるだけで、大学設置基準が求めた「研究室」があるとはいえないと考えています。この裁判をとおして「学問」に資する「研究室」とは何かということをしっかり考えたい、そして、みなさんにも考えてもらいたいと思います。


●皆さんは「研究室」がどうあるべきと思いますか?


文系の教員の方の実情を把握し、裁判所に情報を届けたいと思います。6問だけで短時間で終わりますので、よろしければご協力お願いいたします。



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